超小型人工衛星用無線機のレベルダイヤグラム

アツプリンクとダウンリンク各々のレベルダイヤグラムです。(PDFファイル)


注)

1.この図には、下記の不正確なところがあります。
 145MHz受信機のIF AMP出力は、IC(TA31188)内部で検波回路に直接接続されていて外部に出ておらず
仕様書にも明記されていないので、推測値です。
検波出力は140mVrmsとICの仕様書に書かれてあるが、インピーダンスは不明です。
図ではインピーダンスが50Ωであるものとして、計算をしています。
出力のオペアンプは、-16dBVの値にしました。
ここも50Ωであるものとしての電力計算値です。
 つまりIF AMP以降は、実際のインピーダンスを無視して、電圧だけに着目した図ですので、真の
電力レベルは違った値になります。
復調されたFSK出力レベルは、今回-16dBVに抑えられてハイインピーダンスの負荷となっている。


2.SG(標準信号発生器)の出力電圧表示
 昔のSGは設定した出力電圧の表示が、たいてい開放端電圧になっていた(無負荷時の電圧表示)。
SGを使って測定する性能の規格も、開放端電圧表示に基づいて定められている場合が多かった。
しかし、現在作られているSGは、終端負荷時の電圧表示が多く、切替え表示出来るタイプもある。
今回のは、終端負荷電圧表示になっています。

 例えば、出力電圧1μVを0dB/μV(略記=0dBμ)として表示している場合

終端負荷電圧表示のSGでは、無負荷時に2μV(=6dB/μV)、50Ω負荷を接続時は1μV(=0dB/μV)が
出力される。(終端負荷電圧表示のSGでは、0dB/μV=-107dBmである)

開放端電圧表示(EMF)のSGでは、無負荷時に1μV(=0dB/μV)、50Ω負荷を接続で0.5μV(=-6dB/μV)
が出力される。(開放端電圧表示のSGでは、0dB/μV設定時は、-113dBm出力に相当する)

 無線装置の性能を測定する時には使用するSGがどちらの表示であるか見ておかないと、6dBの測定
誤差が生じてしまう時があるから、注意が必要である。
 dBm表示の場合は、終端負荷電圧表示で、0dB/μV=-107dBmの関係が成り立つようにしてあるよう
なので、この間違いをすることは少ない。
使用中のSGがどちらの表示かよく分からない場合は、スペクトルアナライザでモニタして確認する
と良い。(107dBμに出力設定して0dBm出ているかどうかで判別する)

★EMFとは、Electro Motive Forceの略で起電力。信号発生器などの開放端の電圧表示を意味する。
  (用語集から引用)

3.高周波増幅トランジスタ 2SC3356
 トランジスタ2SC3356を多用しているが、ローノイズ(NF=1.1dB)でFt=7GHz、5V以下の低電圧でも
効率よく動作してくれて、使いやすい素子である。
小信号増幅から中信号増幅、低周波からUHF帯までの発振用など、大抵の回路に使用可能である。
中には、4個パラレルにして300mW(430MHz)送信出力を出すトランシーバの例もある。
  (1個当たり75mWの送信出力である)

 今回の受信機でアンテナから入ってすぐに高周波増幅するトランジスタも2SC3356を使っている。
コレクタ電流を充分流して、入出力のインピーダンスマッチングをうまく合わせると、利得は20dB
程度取れる。
しかし、その状態にするとアンテナのSWRが良くない時や、アンテナが外れている時に異常発振する
現象が多発して困ることがある。
 今回は、消費電流を少なくしなければならないので、3mA程度にコレクタ電流を抑えているから、
利得は少な目である。
それでも、アンテナの状態によっては、異常発振する場合が見受けられるので、コレクタへ直列に
発振止めの抵抗(R2,150Ω)を入れて、感度が悪くならない程度に利得を下げて安定化した。
 高周波増幅段は、アンテナが異常であっても、この異常発振を起こさないようにする事が重要で、
この制約が、ここでの利得決定において大きい要素になり、事前の計算が難しい。
部品配置・基板パターン等の影響が大きく、実績による経験と勘に頼るところである。
つまり、増幅素子の能力より、かなり低めの利得に下げて使用しないと不安定になる場合が多く、
前後に接続される回路の状態で最適値は変わってくる。今回のは、約10dBの利得と推定される。
(送信の終段電力増幅もアンテナの状態で異常発振しにくいようにする為に効率が犠牲になる)

4.第一周波数変換回路(1st Mixer)
 周波数変換回路(MIX)にはL6とC12の直列素子が2SC3356のベースとGND間にあるが、これは間違
いでは無い、インピーダンスマッチングでは無駄な回路素子であるが、別に大きい意味がある。
この2つの素子(L6とC12)を追加すると、感度が良くなり、しかも実効選択度も改善される。
この効果は明らかに大きいのであるが、なぜか専門書にもこの点についての記述を見た事が無い。
これは、「周波数変換して取り出そうとする目的のIF周波数」と「2信号等の妨害波ビート周波数」
に対して、ベースのインピーダンスを低くしてやると、変換利得が上がり実効選択度が改善される、
という現象であるが、この点の理論的な裏付けはよく分からない。
前に、低消費電流で性能の良い周波数変換回路を研究していたときに、これを偶然発見した。
うまく調整すると12dBSINAD,-3dB,3信号法で隣接・次隣接妨害において、70dBが得られた事がある。
従って、DBMやFETを使った高性能な回路に近い性能が得られる。
どなたか、この点について理論的に分かる方いましたら教えて下さい。
 トランジスタによる周波数変換回路は、FETやDBMより実効選択度が良くないと言われる。
一方、消費電流が少なく、局発レベルも小さくて済み、全体として小型化出来るという特徴がある。
L6とC12の直列素子は、この良い点を生かしながら、実効選択度も良くするノウハウである。
結果は、小型で低消費電流の割には高感度であり実効選択度も良く、バランス良い回路が出来る。

 PLL ICの中には、受信用の周波数変換回路が内蔵されているが、これは使わなかった。
以前、これを使った時に、強い信号を受信するとPLL回路に受信信号が回り込んで、動作が異常に
なる現象があった。(通常の動作状態では問題無いが)
ダウンリンクと同時に送受信する可能性があるのと、室内実験中は相手の送信機との距離が近くて、
強力な受信信号のもとで実験される場合が多いと思われるので、今回も使わない事とした。









 本文は、書き足しながら掲載しているので、まだ文脈がおかしい所があるが、御容赦願います。



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-----編集責任者:西 裕治 (Ji3CKA)-----