=== NTSシリーズハンディ機回路の特徴 ===
 
1.回路素子
 全体的には、FETを使用せずバイポーラのトランジスタを多用しています。
FETの良好な特性を生かそうとすると、消費電流が大きくなってしまうことが多い。
少ない電流では、バイポーラトランジスタの方が特性が良い場合が多くなります。
電池寿命と性能を考慮して、慎重に回路素子および消費電流を設計しました。
製造中止になってしまうICやトランジスタがあるので、できるだけ種類を統一しました。
 
2.ハイフレSSBジェネレータ
「SSBジェネレータの秘密」のコーナーで紹介しているように、高い周波数(VHF:21.24MHz,UHF:30.41MHz)でSSB
を生成しています。つまりIF周波数が高いわけで、これにより下記の大きいメリットがあります。
 a.送信フィルタは比較的ゆるい特性でもスプリアスを低減できる。
 b.受信フィルタも比較的ゆるい特性でイメージレシオを大きくできる。
これは、回路がシンプルで小型化しやすいことを意味しており、ハンディ機としての重要な要素です。
 
 
3.受信回路
 回路図ではIFアンプと同調回路が少なく、検波回路もそれらしくないという感じを抱くことと思います。
検波回路はベース検波の体裁を取っていますが、周波数変換回路(MIXER)と見た方が良い。
 SSB波は音声周波数を高い周波数にシフト=周波数変換されただけの信号波形と見ることができる。
従って、IF信号周波数を元の音声信号に周波数変換すれば復調できることになります。
 NTS210では、Q4(2SC3356)で検波していますが、前段との結合コンデンサC18が異常に大きい値
(1μF)になっています。これは間違いではありません。
21MHzの信号を通すだけの場合1000PFもあれば充分ですが、その場合ベース検波によるAM検波成分が、
現れてSSBの検波出力に歪みを生じる事になります。
そこで、ベースのAM検波成分に対して大きい容量のC18とL8でGNDにショートさせているわけです。
これで、検波回路における歪みは改善され、検波感度も向上します。
この回路は、バイポーラトランジスタで直接検波するダイレクトコンバージョン受信機としても使用可能です。
 
 この検波回路は、感度が良くて低レベルで動作しますから、IFアンプでゲインを上げる必要が無く、
高利得のアンプが無い分、小型で動作が安定します。
 弱点としては、IF出力レベルが低いのでAGC用の信号を得られない事が挙げられます。
NTS210,710では、そのため低周波アンプの出力からAGC電圧を得ています。
 低周波からAGC電圧を取り出すと、急に大きい信号を受信したとき一瞬飽和して歪みますが、通常は
AGCの時定数を充分大きくしていますので、実用上の問題は、あまりありません。