☆☆☆ 超小型人工衛星用無線機の検討課題と対策 ☆☆☆

 CW送信機 FM送信機 FM送信機2002 FM受信機

 今回製作した無線機をマイコンと接続し、アップリンクとダウンリンク及びCW送信機能について、それぞれ個別に
動作させ、基本的な機能について確認していただいた。(2001.05.01)
一応、一通りの個別動作はOKになったが、小型軽量の構造設計による制約から、使用環境で注意が必要である。
今後、システムとして安定に動作させる検討を行う場合の検討課題をまとめておきます。

1.アップリンク(145MHz帯FM受信)
 FM受信機は、安定に動作しており、問題無いようである。
FSK受信に対する、マイコンノイズの影響は未確認。(アンテナとマイコンの距離が近いから要注意)
周囲にパソコン等が無く、他にノイズの無い場所で、FSK受信機にアンテナを付けて、RSSIの電圧を確認する必要がある。
アンテナを外した時に比べて、付けた時にRSSI電圧が大きくなれば、その分がノイズレベルと判定出来る。
もし、そのノイズが大きければ、その分受信感度が低下してしまうから、マイコンのノイズ対策が必要になる。
(マイコン回路をシールドケースに入れるとか、多層基板の1層を全面GNDパターンする等)
ノイズが空間に輻射されてしまうと、受信機側では対策のしようが無いからマイコンボードで充分な検討が必要である。
 もしマイコンクロック周波数の高調波で妨害される場合はクロック周波数を数KHz変更するだけで解決する事もある。
(水晶発振子の両端に付くコンデンサの容量を変える等)
温度変化やマイコンの動作状態でノイズの出方が変わって、特定の条件の時だけ妨害を受ける事もあるから注意が必要。

2.ダウンリンク(430MHz帯FSK送信)
 マイコンノイズが送信機に回り込んで、変調音に混入する。
特に、衛星ケースに収納されていない状態で、アンテナを付けて送信すると、この回り込みが大きい。
衛星ケースに入っていない時の送信実験はダミー抵抗(50Ω)を使用する。
送信中はマイコン側で他の動作を行わない。
マイコン出力ポートが変化する動作は全て影響を受けるから送信中のマイコン動作は必要最小限にする。
 衛星ケースに収納されている状態であれば、アンテナを付けて送信した時のマイコンノイズ混入は
少なくなるが、状況により通信に悪影響が出る不安定な動作が見られる。
PLL回路を1/2の周波数で発振させる2逓倍方式で送信高周波の回り込み対策をしているが完全ではない。
この点がマイコン基板と同じケースに実装する小型UHF帯FM送信機設計の課題である。

ノイズ対策としてフィルタ基板を無線機の信号線引出口に追加する方法が考えられる。
このフィルタ基板と信号線引出口の間の配線が短いほど効果が大きい。
電源ラインも含む全ての信号線をこのフィルターを介して接続する。
アンテナケーブルはケース内を長く引き回していないので影響が少ないが、シールドをフィルタGNDに接続すると効果的。
---FM送信機開発---の4.5項参照

PLL制御ループを高速にして、ノイズの影響を抑える対策を行うと効果的であった。(2003.2.16)
周波数設定計算と調整方法が複雑になるが、フィルタ基板より効果が大きい。
大きいノイズを受ける場合は、フィルタ基板と併用する方法も考えられる。---FM送信機開発---の4.6項参照


3.CW送信機(430MHz帯CW送信)
 FM送信機と同様に、マイコンノイズ等が送信機に回り込んで、変調音に混入する。
マイコン出力ポートが変化する動作は全て影響を受けるから送信中のマイコン動作は必要最小限にする。
実験では、AC電源トランスや蛍光灯等からの、50Hz電磁誘導ノイズの影響を受けやすい。
衛星ケースに入っていない時の送信実験はダミー抵抗(50Ω)を使用する。
 ノイズ対策は、---FM送信機開発---の4.5項参照
PLL回路を1/2の周波数で発振させる2逓倍方式によって安定性は良くなっているが使用環境によってはノイズが混入し易い。
CW送信機のモニター音には、外部のノイズが無い状態でも若干ノイズ音が含まれている。
これは、PLL制御ループを、約200KHzの高速で動作させている時のジッタであり、それが「ジャリジャリ」した音
としてモニタ音に混じる。
受信機でCW用のナローフィルタを通すとこの音は殆ど感じなくなるがSSB用フィルタだと耳障りに感じる。
PLL制御ループを低速で制御すればこの音は小さくなるが、KEY-ON時のショックによる周波数フラツキを 抑える動作が
遅れるために、クリック音が増大してしまう。
この点が小型軽量を最優先にした今回のCW送信機を設計する上で最も難しいところであり両者のバランスを考慮した。
ジッタとクリック音をいかに小さくするかは、小型UHF帯CW送信機設計の今後の課題である。


4.その他
 真空中で、ガスを放出する恐れのある物質は、衛星に使用しないようにしているそうです。
当初この点についての認識が無く、装置に悪影響さえなければ少々ガスが出ても構わないのではないかと考えていたが、
衛星軌道上の環境を汚さない事や真空試験装置の実験に支障が出ないように、使用する材料を慎重に選択する必要がある。
今回は、学ぶことが多い開発テーマになった。

無線機のマイコンノイズ対策は経験と勘を必要とする最も難しい作業の一つである。
着目するべき項目が多岐にわたり、再現性が低い現象で面倒な点が多いが、対処方法の一部を参考にまとめておく。
「マイコン等のノイズ対策」

それから、JA3XGSさんからノイズ対策の貴重なアドバイスを頂きました。ありがとうございました。










☆このページは依頼元「東京大学 中須賀研究室」の了解を得て公開しています。
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