☆101A型小型衛星用無線機は製造終了しました。
  今後は301A型でご注文を承ります。

 FM0.8W送信機  FM3W送信機  FM受信機  検討課題  変調方式  レベルダイヤ  異常発振対策
 高速伝送無線機2006年再開発  気球実験  簡易ANT共用器(参考)  超小型人工衛星用無線機仕様書

★超小型人工衛星用 CW送信機 TXE430MCW-101A★

1.目的:超小型人工衛星用の小型CW送信機(430MHz帯)を開発する。

2.CW送信機の主な仕様(430MHz帯)
(1)送信出力============= 定格100mW (アンテナ切替回路経由)
(2)待機電力============= 約40mW (9.5mA,4.2V)
(3)電源電圧============= 定格4.2V
(4)動作環境温度========= -30〜+60℃(周波数安定度=±10ppm以内/-10〜+60℃、-30℃のデータ要)
(5)出力インピーダンス==== 50Ω
(6)ケース外形=========== 90×60×10mm 以内(FM送信機を含む外形)
(7)質量================= 約74g(FM送信機を含む)
注)周波数を変更する場合は、制御ソフトの変更と共に、PLL回路の基準発振周波数再調整が必要(部品変更を伴う場合もあり)

3.「CW送信機」の設計方針
 動作確認試験日程の都合により、約2ヶ月の短期間で設計・製作する。
 温度範囲などの使用環境を充分考慮する。
 PLL周波数制御は外部のマイコンから制御する。(放射線を考慮してフラッシュメモリのPIC16F84は使わない)

4.設計・開発状況
------------------------最新設計資料------------------------
☆最新回路図  ☆最新基板図  ☆系統図  ☆申請用系統図  ☆制御信号線仕様  ☆PLL制御サンプルソフト
☆ケース図  ☆CW信号モニタ音
☆外観写真(平面)  ☆外観写真(側面)  ☆基板実装写真(上側CW送信機、下側FM送信機)
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FM送信機とCW送信機が内蔵されたケースの外観


4.1 周波数制御:PLL回路
 回路は、当社のPLL201Aを基本に設計する。
430MHzにおいて、そのままで-30℃まで冷やしてみたところ、発振は正常に維持しているのを確認出来た。
実験回路定数:L3=0.5T/2.0φ,C16=10PF,C17=10PF
周波数変動は、-10℃で-1.5KHz、-30℃では-7KHz程変動した。+60℃では、-0.7KHzであった
これは基準水晶発振子(12.8MHz)の安定度によるものでバラツキがどの程度あるか確認が必要である。
[実験の水晶振動子:AT-49 12.800MHz] 
(2001.02.25)

温度特性の良い水晶振動子を入手したので取替て実験した。[実験の水晶振動子:UM-5 12.800MHz ヘルツ製 HDA0674] 
(2001.03.02)
周波数変動は25℃に対して、-30℃で-3KHz、-10℃で+1.5KHz、+40℃で-1.3KHz、+60℃で-2.1KHzであった。
高温での変動は前のより大きくなったが、低温-30℃の変動は格段に小さくなって安定している。
形状も小さいからこれを使う事にする。

 「小型・軽量・低消費電力・短納期」の厳しい条件から、PLL回路をうまく応用しなければならない。
400MHz帯でのPLLは、CWの断続による周波数のふらつきが目立ちやすい。
高周波の回り込み等で周波数がふらつくと、受信のCWトーンが恥ずかしい音になる。
バッファ段数を多くしたり、シールドを厳密にするとか、発振周波数を1/2にして2逓倍する等の対策をする必要がある。
スペースと消費電力を考慮して、どの方法が良いか検討した結果、2逓倍方式の方が総合的に判断して良さそうである。
-->2逓倍方式に決定(2001.03.06)
PLLには、半分の周波数で発振するように制御して、2倍の高調波を取り出す方法で実験を進める。

小型軽量にするため、電力増幅段との間で十分なシールドは望めないから、PLLの比較周期を目一杯速く設定して、更に周波数のふらつきを抑える。
検討の結果、比較周期は、約200KHzで行う。(普通は、5〜25KHz程度で設定される)
従って、チャンネル設定は約200KHzステップになるが、リファレンスカウンタとの設定値と組合せると、約26KHzステップで設定可能である。
このチャンネルステップに合わない周波数に設定するときは、最も近い周波数に設定し、約±13KHzの範囲で、基準発振12.8MHzを調整して合わせることにする。
参考:PLL設定方法比較表(←使用と記入の欄で設定)
参考:PLL設定計算例
PLL設定計算エクセルファイルでは、目標周波数を入力して近い設定値を選びますが、ICの都合で使えない
設定値でないか実験により確認が必要です。
B11セルに目標の周波数を入力して、計算結果から、偏差が小さく、STEPが大きい、Nprgは整数、を選び、
Nprg設定が可能か現品で確認して決定します。

VCOの可変範囲を大きくするとC/Nの劣化が見られるので、調整した周波数の約±1MHz程度の範囲で使用する。

小型のアルミケースに実装して動作確認を行い、異常があれば更に対策を検討する必要があるかも知れない。

待機電流(PLL-ICとバッファアンプ1段)は、11.5mAの44mWであった。

4.2 電力増幅回路
 電源の容量が限られているため、極力省電力設計にする。
電源電圧3.8Vで、100mW出力時の消費電力は目標値が、300mW(最大600mW以下)である。
指定の条件では、パワーモジュールより個別のトランジスタで構成する方が効率のよい回路を製作できる
現在、実験中の性能は、全電流90mAで342mW消費して、100mW出力が得られるところまできた。(電源電圧3.8V時)
この時の送信スプリアスは、2倍の高調波(870MHz)が一番大きくて1μW、その他は0.1μW以下である。
(π型2段LPF付き)
実験中のPLL基板とNTS基板を利用して組んだ電力増幅回路の写真
LPFのコイルは、ちょうど良いところにパターンが無かったので、チップコンデンサをGNDパターンに立てて跨らせた。
(2001.03.04)

CW送信機の消費電力は300mW以内に抑えて、送信出力を出来るだけ大きくする方向に方針を変更。
(消費電力を300mW以内に抑えられれば、太陽電池だけでも動作可能→電源電圧変更に伴い再検討?)
(2001.03.06)
アンテナ出力端は、コイルをGNDとの間に追加して静電破壊防止をする。(2001.03.13)
FM送信機とアンテナを共用するための切替回路をCW送信基板に追加する。この通過ロス分の効率は低下する。
更に、定格電源電圧を3.8V→5Vに変更に伴い消費電力が変わるが、詳細はプリント基板製作後に再調整・確認する。

4.3 電源
 PLL回路は、電圧変動などに弱いから周波数安定化のため、3Vの定電圧ICを通して使用する。
電源ラインのバイパスコンデンサは、低温時の特性劣化と放射線対策のためアルミ電解コンデンサを使わない。
大容量積層セラミックコンデンサを入手できれば、それを使用する。
タンタルコンデンサを使用する場合は、破損時の電源短絡事故防止のため、2個直列にする。
現在、どの方法にするか検討中。
(2001.03.06)
大容量積層セラミックコンデンサの1μF,25Vを入手して実験したところ問題無いようである。
これに変更する。
スイッチング電源のリップルが問題になるようなので急遽、低ドロップ型定電圧電源回路を電源入力側に挿入する実験を行った。
低ドロップ型定電圧電源の実験回路図(2001.4.8)
素子の主な説明:出力電圧はR4で微調整可、最大電流はR3による(電流制限機能は無し)、C1〜C3とR6は発振止め
実験に使用したツェナーダイオードがRD3.9E ではなかった事が後で判明しました(型番調査中)、訂正します。m(_ _)m 2001.10.25
NECのRD3.9Eを使用すると目的の電圧より低い出力電圧になりますので、もう少し高い電圧のダイオードに変更が必要です。
実験の基板写真↓(5V入力、出力 4.5V 最大約700mA、入出力電圧差は0.3V以上が必要、無負荷時の漏れ電流=1.3mA)

入出力電圧差に余裕を持たせるため、4.2Vに変更して実験中。(R4,2.2KΩ→100Ωに変更で、出力電圧4.5→4.2V)
この定電圧回路から4.2V供給でのCW送信機の実験結果:待機時11mA、送信時約95mA/100mW出力時(定電圧回路の消費電流を含む)
これを電源供給側に入れてもらうことになった。

4.4 プリント基板
納期に間に合わせるため、回路設計が一部未完成ですが、基板パターン設計を見切り発車し、並行して急いで進める。
(2001.03.05)
基板パターン設計は完了して基板製作の手配を行った。(2001.03.17)


4.5製作・試験調整
 予定としては、まず3台製作する。動作試験後、さらに2台製作する。
プリント基板入手、部品実装および試験調整に取りかかった。(2001.03.30)
供給される電源電圧が変わって来ているが、リップルフィルタ用の定電圧電源を経由して、4.2Vで実験中。
CW送信機の効率を更に検討した結果、4.2Vで100mWを出力する時消費電流は95mA。(R5,330Ω→150Ωに変更)
CW送信機での消費電力は400mW、5V供給側では475mWの消費電力になる。(定電圧回路で75mW消費される)
1台目の試験調整を一通り完了、-30℃〜+60℃の範囲での動作を確認出来た。振動に弱い素子をシリコンゴムで固定した。
↑シリコンゴムは、真空中でガスを放出しない宇宙用に変更する。
周波数変動は、-30℃で-2KHz、-10℃で+1.7KHz、+60℃で-2KHzであった。(2001.04.14)

製作中の送信機内部写真(2001.4.10)


送信機温度試験データ(-30〜+60℃)


4.6マイコンノイズ等の高周波回り込み対策 (2001.06.01〜)
 信号線から送信高周波が回り込んで、S/Nが劣化する現象がみられる。
マイコンノイズの他に、AC電源や蛍光灯の放電ノイズの影響も受ける。
送信高周波の一部がマイコン等のレベル変動する信号で振幅変調されて回り込みPLL発振周波数に影響を与える現象である。
 ノイズで振幅変調される変調度はあまり大きくないが、それがPLL回路のVCOにまで回り込むと、周波数が変動してFM変調が
加わる。そうなるとS/Nの劣化が著しく、通信不能になることもある。
FM送信機側もその影響が大きいので対策を同時に行ってみた。---FM送信機開発の4.5項参照

ノイズ対策でPLLロックループの応答を速くして周囲ノイズの影響を少なくする改良を行った。(2003.02.25)
FM送信機でも対策済みであるが、同様に効果が見られた。
変更点:C29→1000PF、C30→0.1μ、R19→1K、R21→10K

4.7送信増幅の送受切替電源回路---(2003.05.20)
 CW送信機に電源電圧を印加すると、PLL回路とQ6のバッファアンプが動作して、待機状態で約10mA流れる。
KEY端子をONにすると、Q2,Q3,Q5に電源が供給されて、出力100mWがアンテナへ供給される訳ですが、この時
Q5以降の電源ONするショックがPLLの発振回路に伝わって一瞬周波数が変動する現象が見られる。
短時間の現象なので問題は無いと思われるが、下記の変更をすると改善される。
☆R10の電源側を3V(IC2の出力)に接続変更する---Q5を連続動作させて断続しない
この変更をすると消費電流は待機時に3mAくらい増加し、-65dB程度のキャリア漏れが見られる。



御注意! FM送信機 TXE430MFM-101A と組み合わせて使用するときは、電源を同時に供給しないこと。
 電源を制御せず、両方とも連続供給する場合は、送信していない方のPLL-ICをBS(待機)にして下さい。




☆☆☆☆☆ アドバイス・ご意見 ☆☆☆☆☆

JH3BZSさんから貴重なアドバイスを頂きました。ありがとうございました。
 タンタルコンデンサの耐圧は、充分余裕を持たないと安心出来ない。特に高信頼を要求される装置の電源ラインでは、
ヒューズ内蔵で3倍程の耐圧のものを複数並列に使う様にしている。
大容量積層セラミックコンデンサの場合、低耐圧品は衝撃に弱い、これも要注意である。
真空中では、空気の対流による放熱効果が無いから、熱放射だけになる。
(2001.03.06)

JR3ELRさんから貴重なアドバイスを頂きました。ありがとうございました。
 真空中用の電池を選び、真空での動作確認や振動試験、および全装置を低温にしてコールドスタートする等の試験を
事前に行うべし、電池は低温に弱くマイコン等の異常動作が発生し易い。
(2001.3.13)

JA3XGSさんから ノイズ対策の貴重なアドバイスを頂きました。ありがとうございました。















☆このページは依頼元「東京大学 中須賀研究室」 の了解を得て公開しています。
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-----編集責任者:西 裕治 (Ji3CKA)-----