FM受信機 FM3W送信機 CW送信機 検討課題 変調方式 レベルダイヤ  異常発振対策 LINK-気球実験 
 簡易ANT共用器(参考) 超小型人工衛星用無線機仕様書

人工衛星用無線機 開発
 
★超小型人工衛星用FM0.8W送信機開発経過 TXE430MFM-101A★

1.目的:超小型人工衛星用の小型FM送信機(430MHz帯)を開発する。

2. FM送信機の主な仕様(430MHz帯)
(1)送信出力=============== 定格0.8W
(2)消費電力=============== 約3.25W (650mA,5V)
(3)電源電圧=============== 定格5V
(4)動作環境温度=========== -30〜+60℃(周波数安定度=±10ppm以内/-10〜+60℃、-30℃のデータ要)
(5)出力インピーダンス====== 50Ω
(6)ケース外形============= 90×60×10mm 以内(CW送信機を含む外形)
(7)質量=================== 約74g(CW送信機を含む)
注)周波数を変更する場合は、制御ソフトの変更と共に、PLL回路の基準発振周波数再調整が必要(部品変更を伴う場合もあり)

3.「FM送信機」の設計方針
 動作確認試験日程の都合により、約2ヶ月の短期間で設計・製作する。
温度範囲などの使用環境を充分考慮する。
PLL周波数制御は外部のマイコンから制御する。(放射線を考慮してフラッシュメモリのPIC16F84は使わない)
CW送信機の設計内容を利用して納期短縮する。
消費電力低減のためパワーモジュールを使わずに、高周波パワートランジスタを組み合わせて高効率設計する。

4.設計・開発状況
------------------------最新設計資料------------------------
☆FM送信機最新回路図 ☆FM送信機旧回路図 ☆FM送信機最新基板図 ☆系統図 ☆申請用系統図
☆PLL制御-新サンプルソフト  ☆PLL制御-旧サンプルソフト ☆制御信号線仕様  ☆ケース図 
☆外観写真(平面) ☆外観写真(側面) ☆基板実装写真(上側CW送信機、下側FM送信機)
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FM送信機とCW送信機が内蔵されたケースの外観


4.1 周波数制御(PLL回路)と変調回路
 PLL回路は、CW送信機と同様の回路を使用する。(VCOは1/2の周波数で発振して、その後2逓倍)
変調回路は、VCOに直接変調をかける。(リアクタンス変調)
基準発振周波数へも同様の変調をかけて、PLL回路による変調波形への干渉を相殺する。
そのため、基準水晶発振回路にもバリキャップを接続して、VXO回路にする。
入力レベルが小さい場合も想定して、1段目のオペアンプで増幅兼リミッター回路とする。
入力の直列コンデンサは、プリエンファシスをかける必要があれば、小さくする。
スプラッタフィルターは3次チェビシェフフィルタ(0.5dBリップル)で構成。

4.2 電力増幅回路
 CW送信機の回路に送信電力増幅段を1段追加して構成する。
電源電圧は5Vで、目標は、0.6〜1W出力。
指定の条件では、パワーモジュールより個別のトランジスタで構成する方が効率のよい回路を製作できる
現在実験中であるが、1W出力時で、全消費電力は3.5W程度である(0.7A)。
PLLは、2逓倍方式で良好に動作している。
FM送信機430MHz1W パワーアンプ実験基板(LPF無し)
(2001.03.05)
終段パワートランジスタは、効率が良いので裏側の基板パターンに多数の穴で発熱を逃がすことで対応出来
そうである。
ケースに実装出来たら再度温度上昇を確認し、基板裏側とケースの間でも放熱の処理が必要か確認する。
終段パワートランジスタの基板裏側に銅板を貼り付けてケースへ放熱することにした。

4.3 プリント基板
納期に間に合わせるため回路設計が一部未完成だが基板パターン設計を見切り発車し、並行して急いで進
めています。(2001.03.05)
基板パターン設計は完了して基板製作の手配を行った。(2001.03.17)

4.4製作・試験調整
 予定としては、まず3台製作する。動作試験後、さらに2台製作する。
プリント基板入手、部品実装および試験調整に取りかかった。(2001.03.30)
1台目は電源電圧5Vにおいて、送信出力は丁度1W出るようになった。消費電流は700mA (消費電力3.5W)
数分間送信を続けると、発熱により0.9Wまで出力が徐々に低下する。
総発熱量は2.5Wであるが、終段電力増幅トランジスタが最も発熱が大きく2W近くになっているようである。
CW送信機のアンテナ切替回路を経由して、アンテナを接続すると消費電流が増えて、スプリアスが大きく
、異常発振することが判明。
この対策を検討した結果、1台目は送信出力が0.8Wに低下、消費電流は50Ω負荷時700mA
(R1→47Ω、L8→2φ1.5T、)
アマチュア無線機用ホイップアンテナを接続しての実験ではコード長を変えると600〜800mA程度変化する。
(SWRはあまり良くないANT)

-30〜+60℃の温度変化に対して正常に動作するのを確認した。(ただし-30℃では出力が0.65Wに低下した)
送信出力が0.8Wになっても良いか確認中(2001.4.12)---送信出力0.8Wで試験・調整を進める(2001.4.13)
1台目の試験調整を一通り完了、-30℃〜+60℃の範囲での動作を確認出来た。振動に弱い素子をシリコン
ゴムで固定した。
↑シリコンゴムは、真空中でガスを放出しない宇宙用に変更する。
熱拡散用サーマルコンパウンドも、真空中でガスを放出するから使用しないようにする。
周波数変動は、-30℃で-2KHz、-10℃で+1.5KHz、+60℃で-2KHzであった。
(2001.04.14)
接続コードから送信高周波が回り込み変調度が変動したり歪む現象があったので対策で、C47を追加した。

製作中の送信機内部写真(2001.4.10)



送信機温度試験データ(-30〜+60℃)

430MHz帯、1KHzの変調信号で±3_5KHzのFM変調をかけた時の波形。



4.5 マイコンノイズ等の高周波回り込み対策 (2001.06.01〜)
 送信時にマイコンノイズ等が送信高周波に重畳して回り込み、変調ノイズとして現れる現象が動作不安定
の要因になっている。
一番大きい回り込みの経路は、信号線を経由して送信機シールドケース内へ誘導しているもようである。
信号線を引き込む直前に、送信電波を阻止するコンデンサ(1000PF)で各信号線とケース間をショートする
フィルターで、大きく改善された。
この対策は、FM送信機とCW送信機の全ての信号線について行わなければ効果が半減する。
信号線の他に、アンテナ同軸コードからも回り込んでいると推測されるが、そのレベルは信号線からより小さい。

送信高周波の回り込みによるマイコン等のノイズで、S/Nが劣化する現象を対策する場合、マイコンボード
と組み合わせて検討する必要があるが、そのノイズ源が手元にないため蛍光灯の放電ノイズに強く結合して
代用してみた。
この種の実験は、再現性が悪い事が多くて対策の効果確認が難しいが、今回は明確な効果が見られた。


フィルタ基板図 4号機信号線端子配列

4.6 改良
 周囲ノイズで高周波の回り込みにより変調に影響を受けやすい点を更に改善した。(2003.2.16)
マイコンや蛍光灯などの周囲のノイズが大きいと変調が歪んだりS/N劣化して通信不能になる場合があったので、
PLL回路定数と制御ソフトを変更して、安定に動作するように改良。
 PLL-ICの設定値は10KHzステップであったのを191KHzに変えて高速化した[eisei-pll-437m49b.asm]
これによりノイズで周波数が変動し始めた時に速く引き戻す動作をするから、ノイズの影響が減少する。
この場合、変調信号による周波数変動も引き戻してしまうため、変調波形が歪む副作用がある。
そこで、基準水晶発振の周波数も同時に変調をかけてバランスをとれば、変調波形が歪むことなく高速の
PLL動作をさせられる。

変更点は、C37→0.01μF、C39→0.1μF、C40→33PF、C45→10PF、R28→10K、R33→10K
変調度レベルを下記の調整要領で行う。
  (1)変調入力信号(1KHz,0.85Vp-p)をMOD-INに接続
  (2)RV1を変調最小にする
  (3)RV2を変調度±3.5KHzに合わせる
  (4)RV1とRV2を交互に数回調整する
この結果、先に行った対策「送信電波を阻止するノイズ対策コンデンサ(1000PF)」は無くても、ノイズの
回り込みが少なく、安定に動作すると思われる。 ☆FM送信機最新回路図 FM用PLL設定計算
周囲に大きいノイズがある場合は、併用する方法も考えられる。
PLL設定計算エクセルファイルでは、目標周波数を入力して近い設定値を選びますが、ICの都合で使えない
設定値でないか実験により確認が必要です。
B11セルに目標の周波数を入力して、計算結果から、偏差が小さく、STEPが大きい、Nprgは整数、を選び、
Nprg設定が可能か現品で確認して決定します。FM用は、64行目の設定を適用した。

FM変調周波数特性のグラフ



御注意! FM送信機 TXE430MCW-101A と組み合わせて使用するときは、電源を同時に供給しないこと。
 電源を制御せず、両方とも連続供給する場合は、送信していない方のPLL-ICをBS(待機)にして下さい。






☆このページは依頼元「東京大学 中須賀研究室」の了解を得て公開しています。
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-----編集責任者:西 裕治 (Ji3CKA)-----